多くの自治体では、認可保育園の入園基準に点数制を導入しています。点数制にしているのは、入園を希望する世帯を公平に入園選考する目的です。
点数や利用調整の制度などは、昨年度と比べて、今年度から急に変更になった例もあります。
保活をしている家庭は、昨年までの点数を基準として自分の家庭が保育園に入りやすいのか、入園しやすくするにはどうやって点数をあげたら良いのかを考えて動いていると思います。
そんななか、昨年までついていた加点が急になくなったら、大変困りますよね。
しかし行政の制度なので、変更がないという保証はありません。今までも、自治体の認可保育園の点数の基準が変わった例や、基準を見直されている例があるのでご紹介します。
目次
[江東区]育児休業加点によって、認可外に預けていた人と育休を取った人の加点が同じ加点点数になった例
江東区の認可保育園で、入園選考の点数の基準が変更になった例を紹介します。
29年から新たに「育児休業加点」というものが出来たことで、「認可外加点」を狙って早期に認可外保育園に預けていたことが無駄になってしまうかもしれない、という事態が起こったのです。
育児休業加点とは
育児休業加点とは育休明けに職場復帰する家庭について、世帯の基準のポイントにプラスして加点がつくようになった新制度です。(江東区の例です)
育児休業加点が導入されたのは29年度ですが、29年度と30年度で加点のつく条件が少し違います。
29年度については、育休中で、2歳児以降のクラスに申し込みする世帯にはプラス2点の加点がつく、というしくみでした。
また、認可外保育園の1歳児クラスに預けていた世帯で、29年度に認可保育園に申し込みしたい場合は認可外の加点(プラス2点)がつきます。
どちらもプラス2点、という加点でみると、2歳児以上のクラスで、それまで認可外を利用していた家庭も、育休中で復帰予定の家庭も、同じ点数が加点されるということです。
もし世帯の基準の点数が同点の場合、29年度までは、長期間認可外に預けていた家庭が優先順位が高い、という制度がありました。
30年度からは、育休中で子どもが1歳児以降の家庭が、復職予定で認可保育園に入園申し込みする場合はプラス2点の加点がつく、ということに変更になりました。
今までは認可外保育園に預けていないとつかなかった加点が、育休中だった家庭についても加点がつくようになりました。
加えて、30年度については、長期間認可外に預けていた家庭の方が優先順位が高いという制度はなくなったそうです。(認可外に預けていた加点はされます。)
認可外加点とは
認可外保育園を利用している世帯に対して、世帯の基準点数につく加点です。
自治体はどうして育児休業加点を作ったのか
認可保育園へ入園しやすくするため、認可外加点を得ることを目的に、育休を早期にきりあげ、子どもを認可外保育園に入園させる世帯が増えました。
そのため、育休を取りたい人も、早期に復帰したい人も同点になるように、育児休業加点を設け、認可外加点の優先についてを見直した、という意図があるようです。
点数の変更があったことでどんな人が困るのか
0歳児の時に認可外保育園に預けて29年度から復職した人と、0歳児の時は育休を取得して30年4月から復職する人とで、加点の点数に違いはなくなり認可外に預けていたことで優先もされない、ということです。(他にも該当すれば優先される項目もあります)
以前は認可外加点がつくと育休取得した場合より加点がつき、有利に認可保育園に入園できるだろうと思っていた家庭にとっては、不公平感がありますよね。
点数の基準が変わることが発表されて、認可保育園に入園させたい家庭に情報は行き届いていたのでしょうか。0歳で認可外を利用するのが必勝セオリーのように書いている保活雑誌も多いと思いますし、認可外を利用して早期に復職した方が認可に入園しやすいという認識でいる方の方が多いと思います。
自治体の窓口に行けば新しい制度の情報は手に入るでしょうが、いつ情報が公表されるのか、復職して平日忙しくしている方にはそんなに頻繁に窓口に通う、ということも難しい面もあるでしょう。
早期に復職したい人もいれば認可保育園に入りやすくするためにやむを得ず早期復職を決断した人もいると思います。
なかには新制度の導入で辛い思いをした方もいたかもしれません。
[世田谷区]兄弟加点の見直しを検討している例
多くの自治体でとりいれている、兄弟加点について、見直しを検討している世田谷区の例を紹介します。
兄弟加点とは
兄弟加点とは、上の子の認可保育園在園中に、下の子も同じ保育園に入園希望した際につくポイントのことです。
どうして兄弟加点が見直しされているのか?
兄弟が別々の保育園だと、親の送迎などの負担が重くなるため、同じ園になるように配慮しての加点です。しかし、この制度だと、加点が得られない第一子が入園するのが難しくなる、という問題もあり、見直しが検討されているようです。
兄弟加点があることによって第二子以降が保育園に入園しやすくなります。第一子がすでに認可保育園に入れている場合は、第二子の出産の際も保活の心配はそれほどしなくてもすむかもしれません。
しかし、第一子が認可保育園に入れていない家庭では、保活の難しさから第二子を産み控える可能性があるのです。
こういった問題により、世田谷区では兄弟加点の見直しについて検討しているのです。
検討の結果、現状では兄弟加点は現行通りの取り扱いに
平成29年1月20日にまとめられた、世田谷区の「子ども・若者部保育認定・調整課」の「保育の利用・調整基準の見直しの検討について【最終報告】」では、兄弟加点の見直しについて議論した結果をまとめています。
内容を抜粋して紹介すると、
- 検討された案
入園の新規申請では第一子も第二子以降も公平に利用調整し、入園後の転園申請時に、第三子以降の子どもを優先する案。※同様の制度を取っている他自治体あり
- 検討された案の問題点
新規申請時の兄弟姉妹加算を廃止した場合、指数が同点で並ぶ世帯が増える。
指数が同点の場合は、低所得世帯が優先順位によって優位となり入園しやすくなる。
そうなると、中高所得世帯に対する影響が大きいことが検証により明らかになった。
- 兄弟姉妹加算が現行通りとなった決め手
待機児童が多い現状や、子育て世帯のライフプラン(住宅購入や転居)に与える影響等を考えると、兄弟姉妹加算の見直しをする場合は周知期間が数年必要になる。
そのため、兄弟姉妹加算は現行どおりの取扱いとする。
ということで、直近の世田谷区の検討の結果では兄弟加点は見直されず、現行通りということになったようです。
兄弟加点の見直しによって困ること
ただ、議論に上がるような話題ですから、今後も兄弟加点が見直されない保証はありません。
世田谷区では兄弟姉妹が在園中、または同時申し込みの場合に基準の点数に5点が加算されます。この5点という加点は他の自治体に比べても比較的大きな加点で、兄弟姉妹のいる家庭では認可保育園に入る為には大切な加点ポイントとなります。
少しでも認可保育園に入りやすくなるように、世田谷区の兄弟加点が高いことを見越して、マイホームを購入したり転居してきた家庭もあると思います。
そんな状況下で、兄弟加点がなくなってしまうのは大問題ですよね。
世田谷区は東京都一保育園に入るのが難しいと言われる地域です。
兄弟姉妹のいる家庭、今後子どもの兄弟を授かりたいと考えている家庭にとっては、万が一この兄弟加点がなくなってしまうと困る家庭も多いのではないでしょうか。
まとめ
保育園の入園選考に関する点数の基準を見直ししている自治体は多いです。
自治体によっては点数の基準が変更された点を、認可保育園の入園申し込みが始まる時期に公表するところもあるようです。変更される内容によっては、保育園への入園しやすさも左右されるかもしれません。
保育園の点数の基準や優先順位が変更される点がないか、自治体の保育課の窓口に足を運んだり、ホームページを確認したり、出来ることは限られていますが、それでも情報を逃さないよう注意して保活をする必要があります。